消防車は車庫に二度と戻ることはなかった。消防士も二度と、家に帰ることはなかった。
これらの消防車は、チェルノブイリでもっとも放射能を帯びた物のひとつだ。消防士はそのとき最初に駆けつけたが、彼らはふつうの火事だと思っていた。誰もそれが何なのかを言わなかったのだ。
清掃人
雇われたり、強制的につれられてきたりした清掃人は、清掃や後始末に従事した。
ソビエト連邦の全体主義政府は、若い兵士たちにチェルノブイリ事故の清掃を命じた。明らかに不十分な防護服と、危険に対する説明もほとんどしないままに。
65万人もの清掃人が、最初の1年でチェルノブイリの惨劇を清掃した。清掃人として働いた人の多くが体を壊し、ある統計では8000から1万人がチェルノブイリ動力プラントで受けた放射線のために死亡したという。この数には、明らかに破壊された4号炉を囲むコンクリートを--石棺と呼ばれる--を造った人たちが含まれている。
写真::清掃人(Liquidators)がチェルノブイリプラントに向かうところ Photo by Lu Taskey.
この地獄の業火は野生動物には天国になった--少なくとも表面的には。人間に捕まることなく繁栄しているが、核の毒がどのように遺伝子の構造をおきかえてしまうのか、誰も完全には理解していない。奇形のヤギが見つかったという調査があるが、動物学者は否定している。
狼とイノシシの個体数は急激に増えた。彼らは捨てられた家や小屋を占領した。奇妙にも、あまり攻撃的ではない。おそらく、汚染されてはいるが食料が十分にあるからだろう。狼や狐、イノシシや鹿が道路を横切るのは、珍しくない。